もんじゅ、ふげん見学
- engineerworks1227

- 2023年10月5日
- 読了時間: 5分
更新日:2024年2月20日

9月25日
今日も一人旅で福井県にある原子力発電所もんじゅとふげんに行ってきました。
前日の事情でトラックが泥だらけです。。
午前中にふげん、午後からもんじゅといったスケジュールでしたがふげんは一切撮影禁止、もんじゅは情報棟のみ撮影可でした。それでこのブログではもんじゅのみの内容になります。

情報棟の外観です。
広報の方がお出迎えしてくださいました。

一番最初に通して頂いた部屋がここです。見学者は私一人でしたが大学の教室のような所でスライドを使って説明して頂きました。
現在、もんじゅもふげんも発電はせず廃炉に向けての工程を歩んでいます。安全に燃料を取り出し、廃炉し、建屋の取り壊しをする研究がされています。さらに廃材を再資源化し、敷地も再利用出来るようにするようです。
日本だけではなく世界中に耐用年数が経過する原子炉がある中で、いずれ廃炉しなければならないことは想定出来ます。しかし廃炉という研究分野があることは初めて認識しました。

3DのCADが無い時代、配管や機器類が干渉しないかを確認するためスケルトンで模型を作ったようです。この模型は実際に建設前に使用したものでかなり精巧に作りこまれています。
もんじゅの技術はオールジャパンで構成されているとのことでした。

もんじゅは原子炉の熱で直接水を沸かし蒸気化するのではありません。原子炉の熱で液体化した金属ナトリウムを熱交換器に通して水を沸かし蒸気化します。

核燃料棒のサンプルです。
核分裂で発生する力はとてつもなく大きなものですが制御してエネルギー化するのは高度な技術が必要みたいです。
原子力発電所の燃料は通常ウランですが、ウランと言ってもそれの全てが核反応をするのではなく全体の0.7%のみのようです。もんじゅでは残りの99.3%の核反応をしないウランをプルトニウムという別の燃料にするので実質上消費した燃料以上の燃料を作り出します。このシステム上、水を直接沸かすのではなく金属ナトリウムが使用されるようです。
それで高速増殖炉と呼ばれているそうです。

1995年液体化した金属ナトリウムが漏れ出す事故が起きました。
配管内温度を測る温度計が破損して、そこから漏れたのです。
400℃の高温になった金属ナトリウムは空気中の酸素に反応すると発火します。
案内してくださった方によると”炎放射器のようになった”と聞きました。

破損した温度計の現物です。
検証するために切断されています。
このあと2Fに行きもんじゅの設備をVRの解説動画を見せて頂きました。

次は車で移動しナトリウム取扱研修棟に行きました。
ナトリウムの性質を知り正しい取扱いを実験をもって体験出来ます。

常温の金属ナトリウムは個体ですが、包丁で切れてしまうほど柔らかいです。
切った金属ナトリウムを400℃まで加熱していきます。融点は98℃です。
やがて発火します。
詳しい温度や化学反応についてはわかりませんが、とにかく高温で液体化した金属ナトリウムが空気中に漏洩すると火災になり危険なことは理解出来ました。

この設備は、上の動画のスケールアップしたバージョンです。
実際に発火した金属ナトリウムを消火する訓練に使用されています。
もんじゅに係わる職員の方は必修とのことです。

消火訓練に使う消火剤です。
金属火災用で特殊な消火器です。
この後、もんじゅの敷地内の展望台から建屋全体を見せて頂きました。

もんじゅは金属ナトリウムの事故が起きた後、10年ほどかけて技術改良を重ね新たな温度計を開発しました。
しかし、その間に起きた事故動画の隠蔽に対する批判や、東日本大震災で見直された耐震強度基準に満たす工事費用の予算が取れないことなどを理由に廃炉の方針となったようです。
黒部ダム(1956年着工で、総工費当時額513億円)が作られた時は、常に命の危険と隣り合わせの困難な工事で、トライ&エラーを繰返したものの事業は完了しました。171名が命を失いましたが、大成功とされその裏付けとして映画にもなりました。しかし、もんじゅ(1989年着工で、事業費11,484億円)は誰も命を落としていないのに1度の事故すら簡単には許されなくなりました。それの要因は何だったのでしょうか?
時代背景を考えるとバブル経済の崩壊や政治の腐敗により日本が大きく失望を経験する時でした。もしかすると政治家は政治に関心を失った民衆の1票を開拓するため、将来に必要な産業やビジネスよりも、今のひっ迫した生活を送る民衆に寄添うような政策論争をするようになったのではないかと思いました。 更には国際的な人権意識の高まりを含む世の中の複雑化も側面としてあったのかもしれません。それで、民衆の今の生活に直結しないような事はすべて血税の無駄遣いという言葉に置き換える発想が世論として誕生してしまったのかなと感じました。
最初からターゲットを絞って数十年後に世界と競争力を持つ産業やビジネスを興すのはまず無理です。とりあえず広範囲に色々なものを展開してみた中である程度伸びてきそうな分野を抽出し、トライ&エラーを繰返した後に世の中に出してみる。といったところでしょう。ということは一瞬税金が無駄と思えるようなことに使われたり事故のような事が起きても、許さずすぐに止めさせるのではなくトライ&エラーをある程度容認するといった民衆の理解が今後重要な事なのかなと思いました。
私は何の専門家でもないので、原子力エネルギーやその他最先端技術について全く精通していません。しかし、日本で開発された独自の技術が国内の世論で消滅していくことが残念です。案内してくださった方の説明で色々考えるきっかけを頂きました。ありがとうございました。



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